英語力=国語力」

もちろん全てのお子さんがこうだとは言えませんが、これまでの経験から結構的を得ているのではないかと思います。実際、「主語・動詞がどういったものであるかが分かっていない」「ある英単語の日本語の意味が分からない」といったケースがよく見られます。そういったお子さんの英語力を伸ばすのはかなり至難の業と言えます。日本語でわかっていないものを英語でわかろうとするのは、そもそも難しい話なのです。

外国語の力が母国語の力を超えることはない

灘中学・高校で英語教師をされていて、作家でもいらっしゃる木村達哉さんは、著書「AI時代の読む力」の中で「外国語の力が母国語の力を超えることはない」とおっしゃっています。加えて、英語が伸びる子には、以下のような特徴が見られるそうです。

 ・ 日本語で 人の話が聴ける

 ・ 日本語で 人前で分かりやすく話せる

 ・ 日本語で 文章が読める

 ・ 日本語で 文章が書ける

一方、「英語ができない子は、日本語の運用力が低いケースが多い」のだそうです。

「イチローにも泣かず飛ばずの時期があった」を英語で訳せ

木村さんは著書の中で1つ、興味深い例を挙げていらっしゃいます。

「イチローにも泣かず飛ばずの時期があった」

これを英語で訳すとします。「時期」は覚えておくべき英単語としても、「泣かず飛ばず」を英語でとは難しいですよね…。実は、英語ができる人は、そのままを英語に訳そうとはせず、日本語を以下のように「加工」(言い換え)するそうです。

「イチローでさえ、うまくプレーできない時期があった」

こうすると、決して訳せない表現ではなくなります。このように、日本語から英語に訳すとき、そのまま訳そうとしてはダメで、どうすれば「加工」できるかにかかっているとのことです。そして加工には当然、日本語の語彙力や表現力を必要とすることがおわかりになると思います。

大阪府入試・英語C問題

大阪府の英語の入試問題では、国語の作文より難しいのではないかと思われる英作文が出題されます。

「一つの分野で特に高い技能を持つタイプの人がいます。また、様々な分野で高い技能を持つタイプの人もいます。あなたは将来、どちらのタイプの人になりたいですか?まず、自分の意見と理由を英語で書きなさい。その後、あなたが「そのタイプの人」として将来やりたいことを書きなさい」(大阪C問題2019・訳)

ここでも、 自分の意見をそのまま英訳しようとすると、かなりハードルが高くなってしまいます。英語で表現できるぐらい自分の意見をできるだけ「加工」 (言い換え) する必要があります。英語の入試ですが、やはり国語力がものを言うわけです。

英語の入試に関係する国語力とは?

では、英語の入試に関係する国語力とはどんなものでしょうか。語彙力・表現力はもちろんですが、私はそれ以上に「要約力」だと思っています。なぜなら、特に上記のような入試問題を解くときは、「自分の考えを論理的にわかりやすく英語で伝える」必要があるからです。文章を論理的にまとめ、わかりやすく伝えることは、日本語でも簡単なことではありません。日本語でも簡単でないものを、母国語ではない英語で行うとなるともっと大変です。まずは日本語で要約ができるか、自分の考えをわかりやすく伝えることができるかを確かめてみましょう。そして、日ごろから新聞など文章を読む習慣をつけ、読んだら要約、自分なりの考えをまとめるトレーニングを積みましょう。日本語でこれが不自由なくできるようになれば、英語に変換しても同じことができるようになります。書いた要約や感想は、 わかりやすく書けているかどうかは自分では判断しにくいものなので、出来れば第三者に読んでもらったほうがいいです。

ちなみに、要約ができるということは、文章の要点がわかっているということ。これは英語以外の教科においても大切なことです。つまり、国語力は、すべての教科の土台となるのです。

また、読書の習慣のある子は英語力も高いです。長い文章を読む体力があるからです。

英語力を上げるためには、国語(日本語)の表現力や語彙力、読書力や要約力に注目してもらえたらと思います。